西表島の自然を支えるシロアリたち
 西表島は沖縄本島から南西に約460km、台湾まで200kmの位置にあり、島のほとんどが山岳地帯に覆われています。それらの山々は亜熱帯の緑豊かな植物に覆われ、イリオモテヤマネコをはじめ多様な生き物たちを育んでいます。
 そんな西表の自然の中ではシロアリたちも活発に活動しています。家屋の害虫として悪名を着せらるシロアリですが、実際に西表島を訪れてみてその働きぶりを確認すると、森の分解者としてのシロアリの役割が非常に大きいことが分かります。枯れ木や弱った樹木を素早く分解し、土に還したり自らを自然に還元することによって森の活性化を担っているシロアリ、そんな彼らこそが西表島の豊かな自然を支えているような気がしました。ここでは西表を訪れて働きぶりを確認することができたシロアリたちをご紹介します。

タカサゴシロアリ
 テングシロアリ亜科に分類されるタカサゴシロアリの兵アリにはその名の通り、頭部に尖った天狗の鼻のようなものを備えています。兵アリは職アリよりも小さく、その尖った先から粘液を出して防衛活動を行ないます。樹上にりっぱな巣を作りますがその中に手を入れると兵アリの攻撃を喰らい、べたべたになります。巣を中心に活動するところや兵アリが液を出すところ、兵アリの数の割合を考えると性格はイエシロアリに似ている気がします。
タカサゴシロアリの兵蟻 タカサゴシロアリの職蟻 タカサゴシロアリの巣
頭部が特徴的な兵アリ。額の先から粘液をだす。 タカサゴシロアリの職アリ。白くない。 営巣する高さは決まっていないようです。木の上に向かって伸びる長い蟻道も目立ちました。
 
タイワンシロアリ
 キノコシロアリ亜科のタイワンシロアリは、土中で菌を栽培して食料としています。蟻道や泥被はヤマトシロアリのものと比べてやわらかくもろいです。それに比べて菌床となる部屋の壁は滑らかでモルタル仕上げをしたかのようにしっかりとしたつくりになっています。雨などで流される泥被は適当に造っておいて、大事な食料庫は丁寧に造るのは当然かもしれません。職アリはヤマトシロアリよりも太っていて、兵蟻はイエシロアリのものに似ています。
タイワンシロアリの職蟻 タイワンシロアリの蟻土 菌園の跡 先端が湿っているタイワンシロアリの蟻道
頭部の色が兵蟻に似ていますが、これは職蟻。兵蟻もいますがタイワンシロアリの職蟻は自身も噛み付いてきます。 地表に造られた泥被。さわるとぽろぽろと崩れる。
土中にあったドーム型の菌床の跡。 製作中の泥被。先端が湿っている。
 
ダイコクシロアリ
 樹木の中で生息するシロアリ。流木によってその分布を広げるらしいです。兵蟻の頭部が黒いのが特徴で大あごは目立ちません。
ダイコクシロアリの職蟻 ダイコクシロアリの兵蟻 ダイコクシロアリの羽アリ
ダイコクシロアリの職蟻。腹部が赤っぽいのは食べている樹木の影響。 頭が黒い兵蟻。バランスの悪さが愛嬌を感じる。 ダイコクシロアリの羽アリ。
 
コウシュンシロアリ
 ダイコクシロアリと同じく木の中で暮らすシロアリ。ダイコクシロアリが生息している樹木よりも柔らかい立ち枯れの樹木で確認できました。体長が12mmくらい。でかい。
コウシュンシロアリ コウシュンシロアリの兵蟻
コウシュンの職蟻と兵蟻。 コウシュンの兵蟻。これにはちょっと噛まれたくない。
 
ニトベシロアリ
 土壌中に生息するシロアリ。土食い系と言われますが鉱物を食しているわけではなく腐葉土などを栄養源としています。土の中にいますから探すときには土を静かに丁寧に掘らなければなりません。兵蟻の大あごは大きくねじれていて、これをはじいて防衛活動?を行ないます。兵蟻を紙の上におくとパチン、パチンとはじく音がして飛び上がります。はじく前には「ため」が必要なようで、飛ぶ前に一瞬動きが止まります。
ニトベシロアリの職蟻 ニトベシロアリの兵蟻
ニトベシロアリの職蟻。 兵蟻。この大あごを見ると生き物ってこういう進化もするものかと驚きます。
イエシロアリ、ヤマトシロアリ
 宮城県には生息していないイエシロアリもよく見かけ、立派な分巣も見ることができました。また、ヤマトシロアリも並み居る強豪に囲まれながらがんばっていました。こっちの方のヤマトシロアリに比べると兵蟻の割合が極端に少ないと感じました。これだけの敵が周りにいるので兵蟻は多い方がいいような気がしますが、よく考えると床下なんかよりむしろ安定的な環境なのかもしれません。
イエシロアリの巣 イエシロアリ ヤマトシロアリ
イエシロアリの分巣。 イエシロアリの職蟻。 ヤマトシロアリの職蟻と羽アリ。


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